Satoshi Masuda/増田哲士/陶のうつわ
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「かま」のこと




やきものを作る工程で最も重要なのが「窯焚き」です。

そして窯を焚くためには「窯詰め」をしなくてはならないのですが、
この作業がなかなか大変です。
できたら誰かにやってもらいたいくらい、本当に疲れます。
窯詰めの良し悪しが焼き上がりを左右するので、全く気が抜けないのです。
つまり、「窯焚き」は「窯詰め」の時から始まっている、とも言えます。

まず窯詰めの最初の作業は、作品の下準備。
素焼きした作品に付いたホコリなどを絞ったスポンジできれいに掃除します。
次に釉薬を付けたくないところに、撥水させる薬品を塗ります。
釉薬のバケツは底からよく攪拌して、メッシュに通します。
釉薬によって濃度、浸す時間が決まっているので釉薬の濃度はきっちり調整します。
そして順番に釉薬を掛けていきます。
すべて掛け終わり釉薬が乾いた後、掛かり具合をチェックしながら修正していきます。
はみ出したところを拭き取ったり、削ったり、筆で塗ったり・・・
修正が済んだら、窯の中へ詰めます。
窯の中は場所によって火の通りやすい所と通りにくい所があるので、
火の通りを考えながら詰めていきます。
最後の段を詰めたら、温度計とゼーゲルコーン(*)をセットして、
灯油をタンクに補充して準備完了。

毎回窯詰めが終わると、ほっとします。
自分のやれることはやったし、あとは炎の仕事、と・・・

窯の呼吸が乱れないように、炎が暴れすぎないように、
炎の色と噴出し方、煤の量や炎の音から判断して油量と空気量を調節。
最終温度に達してくると付きっ切りで温度管理します。
色見穴から覗いて、ゼーゲルコーンが溶倒するのを確認。
さらにしばらく焼成して窯の中を熟成させて火を止めます。


そして窯をよく冷まして、いよいよ「窯出し」です。
新しい釉薬のテストを入れた時は窯出しがとても楽しみです。
たいてい使い物にならないことが多いのですが、
中にスバラシイものがあると、いつまでも眺めてしまいます。

いつもと同じようにしているつもりでも、「あれっ?」と思うような失敗があったり、
何百回も焚いていますが、毎回何か発見があります。

自分でも不思議ですが、窯出しで失敗作が出てきても以前ほど落ち込まなくなりました。
失敗の原因のほとんどが明らかな自分のミスで、
「あぁやっぱりね・・・」と納得してしまうからかもしれません。

「すべての現象には必ず原因がある。」

当たり前のことですが、やきものを始めた頃からずっとこのコトバを持論としています。
その時わからなくても、このコトバを信じていればいつか問題は解決するのです。




*ゼーゲルコーン・・・所定の温度、熱量で融けて倒れる角錐状のもの。
             色見穴(窯の穴)から見えるところに置きます。


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